【フットインザドア】片付けに消極的な家族には、まずラクな要求を

フットインザドア(フット・イン・ザ・ドア・テクニック)は交渉や説得を成功させるための手法のひとつ。聞く耳を持たない家族にお願い事をする際は、この手法を試してみましょう。

本記事の要約

フットインザドアは、相手に何かを依頼する際、事前により小さな要求を受け入れてもらうことで、本来の依頼を受け入れてもらう可能性を高くするという説得・交渉の方法です。


「実家の不要なモノを処分したいけど、親が拒否する」「兄弟・姉妹で集まって遺品整理を行いたいが、いつも断られる」と、説得が上手くいかずに困っている方は多いでしょう。

フットインザドアを用いることで、頼みごとを承諾してもらえるかもしれません。確実にうまくいくとは限りませんが、試してみる価値はあります。



本記事では、フットインザドアの概要や効果、これまでに行われた研究や実験などについてい紹介します。ぜひお役立てください。


ちなみに、フット・イン・ザ・ドア・テクニックと呼ばれることもありますが、本記事では「フットインザドア」で統一します。

本記事で解説する内容

・フットインザドアとは

・フットインザドアの実験

・フットインザドアで家族とコミュニケーション

フットインザドアの概要

フットインザドアとは

フットインザドア(フット・イン・ザ・ドア・テクニック)とは、人間の持つ心理を利用した、相手を説得する際のコツです。具体的には、ある依頼を被依頼者へ承認してもらう確立を高めるため、その依頼(本来の依頼)よりも控えめな依頼を先に行う、という手法です。
言い換えると、一度「コストの低い依頼」を受け入れた人は、続けて行われる「よりコストのかかる依頼」にNOと言いづらい、ということです。


「100%思い通りに交渉や説得を行うことが出来る」わけではありませんが、後述する実験結果などから、一般的に「効果があると言えそうだ」とされています。

現在は、社会活動の様々な場面で利用されていることが確認出来ます。

フットインザドアの例

例えば、友人の家へ泊めてもらいたい場合。いきなり「泊めてほしい」と尋ねるよりも、「1時間だけお家に寄っていい?」と尋ねてOKを貰うというステップを経たほうが、「泊ってもいい?」というお願いにも合意してもらいやすいわけです。

もちろん、必ずしも上手くいくわけではありません。ただ単に、「こいつ調子乗ってきたな、むかつく」と思われることもあるでしょう。


フットインザドアは悪用されることもあります。例えば、振り込め詐欺の場合。

はじめに、被害者へ「有料サイトの利用分料金支払い」を要求するメールが届く。騙された被害者は、指示に従い5000円分のアマゾンギフトカードをコンビニで購入し、カード番号を伝える。

数日してから、別サイト分の支払いとして今度は5万円の銀行振り込みを要求される。銀行窓口ではなく、オンラインバンクを使うよう指示があり、被害者は依頼通りに行動する。

しばらくたってからまた、今度は50万円を現金で郵送するよう要求される。そして、その要求に従ってしまう。


フットインザドアが効果を持つ理由

フットインザドアが効果を持つ理由としては、依頼者と被依頼者の間に絆や関係が生まれるから、など様々な要素が考えられますが、特に「一貫性の原理」と呼ばれる心理が働いているのではないか、と考えられています。

人は、いちど経験した行動や発言、考え方などをブレさせたくない、という心理を持つとされています。上のフットインザドアの2つの例においては、「ある人からの要求に対してYESといった自分」、「友人に優しいと思ってもらっている自分」、「トラブルを避けるためにお金を払っている自分」などといった自分自身を一貫させようとしているといえます。

一貫性の原理については、こちらの記事でより詳しく解説しています。

フットインザドアの語源

「いちど開いたドアへ、つま先か片足でも入れることが出来れば、そのドアは簡単には閉まらない」様子がフットインザドアという呼び方の由来です。英語でもFoot-in-thedoor technique, もしくは各単語の頭文字をとってFTID Techniqueと呼ばれます。

英語では、「足がかりをつかむ・取っ掛かりを得る」という意味の「get ~’s foot in the door」という慣用句も存在します。

フットインザドアの実験

フットインザドアは「必ず依頼を成功させる」魔法ではありませんが、いくつかの実験において、フットインザドア効果によるものと思われる現象が確認されています。

2つの実験例を見ていきましょう。

フリードマンとフレイザーの実験

フリードマンとフレイザーは、フットインザドアの効果を確認するために実験を行いました。この実験は、以下の2つの考えを導き出しました。

・「フットインザドアには効果がありそう」

・「1つ目の依頼と2つ目の依頼の方向性が同じだと成功率は高くなる、方向性が異なっていてもフットインザドアによる効果はあるといえそう」

実験の内容と結果を簡潔に説明すると、以下の通りです。


【実験内容】

・複数の一戸建て世帯へ、庭先に交通安全を呼びかける立て看板を置かせてほしいと頼む。

・そのうちいくつかの一戸建て世帯へは、上述のメイン依頼を行うより先に、交通安全を呼びかけるステッカーをお家の窓や車へ貼ってもらうよう頼んだ(サブ依頼1)。

・別のいくつかの世帯へは、交通安全ステッカーではなく、地域の美化推進を呼びかけるステッカーを貼ってもらうよう頼んだ(サブ依頼2)。


【結果】

・メイン依頼のみが行われた世帯におけるメイン依頼の承諾率は16.7%

・サブ依頼1が行われた世帯において、メイン依頼の承諾率は76.0%

・サブ依頼2が行われた世帯において、メイン依頼の承諾率は47.6%

Nicholas Gueguenによる実験

Nicholas Gueguenは、対面ではなくオンラインでもフットインザドアは効果があるのか、という実験を行いました。この実験においては、電子メールなどによって行われた依頼に関しても、フットインザドアの効果と思われる現象が確認されました。

実験内容と結果は以下の通りです。


【実験内容】

・50人のコンピューターサイエンスを専攻する大学生へ、40の質問を含むアンケートへ回答してもらうよう頼んだ(すべて回答するには15~20分かかる)。依頼主は仮想の学生で、その学生も実験対象者と同じ大学に所属しているという設定(メイン依頼)。

・実験対象者の半分には、アンケートを送信する30分前に、同じ依頼主から「メールに添付されているファイルを別のファイル形式へ変換するのを助けてほしい」という依頼を行った(サブ依頼)。


【結果】

サブ依頼を事前に行ったグループは、メイン依頼であるアンケートへの回答率が、サブ依頼を行っていないグループの回答率よりも高かった。

フットインザドアで、片付けに消極的な家族を説得

「実家がモノで溢れているから片付けたい」「整理整頓が苦手な家族に片づけをしてもらいたい」という場合も、頭ごなしに説得するのではなくフットインザドアを意識してみるといいかもしれません。

以下の2つの例はあくまで「例えば」の話ですが、きっと怖い顔をして片づけを依頼するよりも成功率は高くなるはずです。

例1:実家に住んでいる親が、散らかっている部屋を片付けようとしない

「今度の日曜、手伝うから一緒に片付けよう」ではなく、「今度の日曜、一緒に外食しよう」と声をかけてみましょう。

これに乗り気であれば、実際に外食に出かけた際に、頃合いを見て「今度の日曜は、一緒に片付けしよう」と伝えます。

例2:親が亡くなったため実家の遺品整理を行いたいが、兄弟・姉妹が非協力的

「今度の休日、予定を合わせて実家の遺品整理をしよう」ではなく、「兄弟そろって線香でもあげよう」と伝えます。1年忌などの法事に合わせてもいいでしょう。

実家に集まってもらうことが出来たら、そこで様子をうかがって遺品整理にその日中に取り組んでもいいですし、次回遺品整理を行うための日程を調整するよう話し合ってもいいかもしれません。

フットインザドアの注意点

フットインザドア的な方法で頼みごとをしてみたけど、想像したような返答が得られなかった場合、強引に言うことを聞かせようとした理、それを相手のせいにしてしまわないようにしましょう。

まずは、家族といえども良好な人間関係を築くことが大切です。

メイン依頼に対して、サブ依頼ひとつだけでは不充分なこともあるかもしれません。相手にとって取り組みやすいサブ依頼を増やして、相手からの「YES」を積み上げていくことも有効でしょう。

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