エンハンシング効果とは?褒めることで実家の片づけを成功させよう

褒めるという報酬を与えることでモチベーションの維持・向上が得られることをエンハンシング効果と言います。実家の整理をする際、家族間においても褒めることを意識してみましょう。

本記事の要約

エンハンシング効果とは、人の取り組みを「褒める」ことが、褒められた人にとってポジティブな動機となる現象です。特に教育現場において広く知られており、褒めることの効果を計った実験も多く存在します。

そんなエンハンシング効果を用いて、なかなかうまくいかない実家の整理整頓・親や家族の説得を成功させましょう。不要なモノの処分などを巡って、家族関係がぎくしゃくしたりすることがありますが、それを乗り越えることが出来るかもしれません。

本記事では、そのエンハンシング効果の概要と有名な実験、そして応用する際のコツを解説していきます。

本記事で解説する内容

・エンハンシング効果について

・エンハンシング効果を検証した実験1:褒める・叱る・無反応の比較

・エンハンシング効果を検証した実験2:何を褒めるべきか

・モノの処分や片付けに応用

エンハンシング効果とは

褒められることで動機が維持・向上する心理

エンハンシング効果とは、ある人が行った行為とその成果について、それを「褒める」ことで、次回以降よりよい成果を残す可能性が高い、という効果です。

非難したり無視するよりも褒めることが、パフォーマンスを向上させるための最も適した報酬ということです。

特に、教育分野においてよく用いられます。

エンハンシング効果が起きる理由

人の動機は、外的な刺激と内的な刺激が影響を与えることが知られています。「ほめる」という報酬を与えることは、このうち外的な刺激・動機づけということになります。

なお、エンハンシング効果において、報酬は「ほめる」言葉です。あくまで言語による報酬であり、モノをあげたり、お金を払ったりはしません。

エンハンシング効果は本当にあるのか?

褒めることによるモチベーションの向上については、後述する有名な実験があり、ある程度認められています。

一方、特に以下で紹介する2つめの実験を行ったCarol Dweck氏に関しては、複数の実験から得られた結果に関して再現性がないのでは(他の研究者が同様の実験を行っても、同様の結果を得られなかった)、という批判も寄せられています。

もちろん、個人差などもあると思います。過信しすぎず、褒めるべき時は褒める、ということを意識しましょう。

エンハンシング効果という呼び名について

エンハンシング効果という呼び名はかなり広く知られています。英語へ直訳するとenhancing effectとなります。しかし、enhancing effectという言葉は英語圏では用いられていないようです。

後述しますが、日本においてエンハンシング効果について語られる際、必ず触れられる古典的な研究はいずれも英語圏で行われています。それにも関わらず、enhancing effectでネット検索を行っても、関連する論文はヒットしません。

英語圏では、positive education、the effects of praiseといった言葉が比較的近い意味で用いられていますが、かならずしもエンハンシング効果 = the effects of praise ではないことにも注意が必要です。

まとめると、エンハンシング効果という言葉は日本独自で用いられている言葉だと推測されます。

エンハンシング効果を検証した実験1

Elizabeth Hurlockによる褒める・叱る・無反応の比較

エリザベス・ハーロック氏は、生徒たちへ数学のテストを受けてもらい、その後被研者となる生徒を以下の4つのグループへ分けました。

・ほめるグループ

・非難するグループ

・無視するグループ

・操作なしのグループ

上から3つのグループの生徒は「操作あり」の教室、操作なしのグループは「操作なし」の教室に移ります。

その後、4日間続けて試験を行わせます。

各グループに行われた操作

はじめの試験のあと、「操作あり」の教室内では各グループに対して以下のような操作が行われます。


・ほめるグループの生徒:教室において生徒たちの前に呼び出され、試験の出来を褒められたうえで、次回も励むよう応援される。

・非難するグループの生徒:電話で試験の成績が振るわなかったことについて指摘され、次回はより良い成績を残すよう促される。

・無視するグループの生徒:どの操作も行わない。

実験の結果

その後4日間の期間において、試験で最も好成績を収めたのは褒められた生徒たちでした。続けて、非難されたグループ、無視するグループという結果となりました。操作なしのグループに関しては、向上が見られなかったとのこと。

また、無視するグループにと操作なしのグループに関しては、期間後半になるにつれて成績が下がるという傾向もみられたそうです。


さらに、はじめの試験のあと、生徒たちは成績別に「優れる」「平均」「劣る」生徒としてチェックされていました。いずれのグループにおいても「褒める」ことで最も成績を伸ばしており、成績が「劣る」生徒が特に「褒める」ことによる成績の伸びを記録したそうです。

実験から分かること

実験を通して、「褒める」ことが年齢や性別、能力などに関わらず、成績を伸ばすために与えるのに最適な報酬である、と確認されました。

エンハンシング効果を検証した実験2

Carol Dweckによる何を褒めるべきか

Carol Dweckを中心とする研究グループは、知性・努力・成果のどれを褒めるべきか検証するため、実験を行いました。

被験者は400名の小学5年生。彼らにある程度難易度はあるが、解こうと思えばほとんどの場合よい成績を残せるパズルに挑んでもらいます。

パズルを終えると、生徒を3分の1ずつ、以下の3つの異なる褒め方をします(実際のほめ言葉は英語、本記事の筆者がそれを日本語へ簡潔に翻訳した)。いずれの場合も、成績は良かったと伝えます。

・知性を褒める:良い成績でした、これが得意なんだね!

・努力を褒める:良い成績でした、よく頑張ったね!

・成果(のみ)を褒める:良い成績でした!


上の2つのグループにおいては、成績が良かった理由(得意・努力)を褒めます。3つ目のグループは、成績が良かった事のみを褒められます。

実験の中間結果

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