返報性の心理とは?モノを捨てられない人を説得する時に活用しよう

ヒトが持つ「返報性・互恵性」の心理は、あらゆる行動の動機となっていることが知られています。片付けられない・捨てられない人を説得する際は、この心理をうまく利用するといいかもしれません。ゴミ屋敷や汚部屋に悩まされている方は特に必見です。

本記事の要約

ヒトは恩を受けたら、そのままではいられない・恩返しをしたい、という返報性と呼ばれる心理を持っています。

あなたがもし、実家にモノが溢れているけど親が捨てようとしない、家族がカタヅケの出来ない人間で説得しても聞く耳を持たない、という悩みを抱えているのなら、まずは相手へ何かを与えることから始めてみるといいかもしれません。

そうすると、相手もあなたに何かをしてあげたくなる=あなたの要求にも応じてくれる可能性が高まるはずです。


本記事ではその返報性の心理と、「モノを捨てられない」家族を説得する際の応用例などを詳しく解説していきます。

本記事で解説する内容

・返報性(互恵性)とは

・返報性を確認するために行われた実験

・モノを捨てられない人を説得する前に「ギブ」

返報性について

返報性 = 恩を返したい心理

返報性とは、良いな行為を受けたら良い行為をで対応するという人間社会で共通して認識されていることです。人から何か嬉しいコトをしてもらったら、恩返ししたくなりますよね。簡単にいうと、その心理が返報性です。

返報性は互恵性、返報性の原理などと呼ばれることもあります。また、英語ではReciprocityといいます。

基本的に、恩を返す際は受けた恩と同等の価値・質を提供します。

ヒトが返報性を持つ理由

返報性は、その理由・原因が完全に解明されたわけではありませんが、文化や人類などの学問領域から、納得できそうな説明がされています。

それは、ヒトは地球・社会で生き残るために、恩を与え、恩を受けるということを繰り返したからだ、という考え。例えば、グループのメンバーが猟に出ている間、他のメンバーは子供たちの世話をするなどです。

このようなことを繰り返してきた結果、返報性による恩恵を認識しているため、現在でもそれが続いているとされています。

返報性の例

例えば、ご近所さんへ、出張に出かけている間の犬の散歩をお願いして、快く承諾してもらったとします。出張を終えて帰宅したあなたは、何かお土産もしくはお礼の品をもってご近所さんへ挨拶にいくでしょう。

このように、返報性の心理は日常生活の様々な場面で確認することが出来ます。。

ネガティブとポジティブ

返報性には、ポジティブなものだけではなくネガティブなモノもあります。

もしあなたに年上の兄もしくは姉がいて、その兄姉からげんこつされた場合。あなたも同様に何らかの暴力で仕返そうとするはずです。「目には目を」というやつですね、

ネガティブな返報性とポジティブな返報性の大きな違いとして、ポジティブの場合は受けた価値・質と同等なものを返す傾向にありますが、ネガティブの場合はそれは必ずしも同等でない、むしろより大きな被害を返そうとすることがあります。

返報性の検証実験

実験の目的

返報性は人が行為を受けた時点で、たとえその受けた好意が自ら要請したり期待したものではないとしても、また好意を提供してきた者に対して特に良い感情を持っていないとしても引き起こされるといわれています。

その強さを確認するため、1971年にコーネル大学のDennis Regan(デニス・リーガン)氏はある実験を行いました。実験内容は以下の通りです。

実験の流れ

「美術鑑賞」の実験という名目で手伝ってくれる人を集める。集まった人たちは、ジョーというリーガン氏のアシスタントをパートナーとして、一緒に実験に参加する。

実験の最中、一度ジョーが席を外し、ソフトドリンクを持って再び姿を現す。ジョーはその飲み物を参加者へ渡す。なお一部の参加者へは、ソフトドリンクを渡す、ということを行わなかった。

「美術鑑賞」実験が終了した、というタイミングで、ジョーが参加者に対してRaffle Ticket(アメリカでよくある、学校の部活動などを金銭的に支援するために販売される宝くじのようなもの)を買ってくれるよう声をかける。

Raffle Ticketは慈善的な面があるので、一般的には身近な人など、良い人間関係がある人から買うことが多い。

実験の結果

ソフトドリンクを渡された参加者のグループにおいて、ソフトドリンクを渡されていない参加者のグループよりも2倍チケットを買い取ってもらうことが出来ました。

この実験において、参加者はジョーへ「ソフトドリンクをくれないか」と自ら尋ねたわけではありません。またジョーは友人でもなければ家族でもありません。

つまり、「飲み物をあげる」というジョーにより提供された行為は特に参加者本人が特に望んでいたわけではなく、ジョーに対して個人的な感情なども元々持っていたわけではないということです。

返報性の心理を説得・交渉に応用!

ギブアンドテイク、まずはギブから

返報性は、特にビジネスや恋愛で応用するという観点で語られることが多いです。しかし、もちろんそれだけではなく、これから解説する家族関係など様々な場面(人間関係)で応用することが可能です。

相手に何か要求を受け入れてもらいたい場合は、まずはあなたが相手に喜んでもらえるようなことを行いましょう。テイクではなく、ギブを先に行うのです。

例:モノを手放せない家族を説得

例えば、明らかに不要なモノを溜め込んでいて、捨てるよう説得を試みてもなかなか聞く耳を持たない親。そのせいで、実家がモノであふれ、空間に余裕がなく居心地が悪いという方は多いでしょう。

そのような場合、「捨てるよう説得」= テイクではなく、まず相手が喜ぶようなことをしてあげましょう。庭の木が荒れ放題であれば、さりげなく今度庭掃除をしてあげようか?声をかけてみたりする、などです。

上述の実験で確認されたように、受ける恩はたとえ元々要請したものでなかったとしても、返報性の心理が働くことが分かっています。まずは無理をせずに、あなたの手におえる範囲で初めて行けばよいでしょう。

ギブは一度では不十分な可能性もあります。何度か繰り返して、うまく相手を懐柔しましょう。

信頼関係も生まれる!

この作戦には、相手との関係性がそもそも良いものになる、というかなり大きなメリットがあります。

一度のモノを手放すよう説得することだけではなく、今後別のトラブルが起きた際にも、あなたとの信頼関係のおかげでコトがうまく運べるかもしれません。

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