この時点で、生徒たちに対してこのパズルについて質問したところ、いずれのグループにおいても以下のような答えが返ってきました。
・このパズルを楽しむことが出来た
・家に持ち帰って練習したい
・次はよりよい結果を残す自身がある
まだ、各グループの差はみられませんでした。
続けて、生徒たちに次に取り組むパズルを以下の2種類から選んでもらいました。
・より難易度があるが、経験値を多く得ることが出来る
・より簡単で、確実に良い成績を残せる
すると、知性を褒められた生徒たちの多くが「簡単なパズル」を選んだのに対し、努力を褒められた生徒たちのおよそ90%がよりチャレンジングなパズルを選びました(成績のみを伝えられたグループに関してはばらつきがあったとのこと)。
この実験は、知性・能力を褒められた生徒は以降「自分をより良く見せようとする」傾向にあること、努力・過程を褒められた生徒は以降「成果を得るために取り組む」ことに注力するということを検証することが出来ました。
エンハンシング効果を、モノを手放せない人の説得や実家の片付けに応用しましょう。
整理整頓はなかなか苦労の多い取り組みであり、一筋縄ではいきません。少しでも作業が進んだら、その取り組みを褒めて、モチベーションの維持・向上を計りましょう。
褒められたら嬉しい、次も頑張る。人間は意外と単純です。
「褒めろなんて、そんなこと言われなくても普段からやってるよ」と高を括る人が意外と多いです。しかしよく観察してみると、人をちゃんと褒めることが出来ている人はすごく少ないです。
特に親子関係だとその傾向が顕著でしょう。親は子のことを「言うことを聞かないやつ」といつまでも思っていたりしますし、子は親のことを「言っても理解してくれないやつ」と思っています。
意外と褒めていない例として、例えば実家を整理整頓するよう親に伝えた子(既に成人)の場合。親が自主的にモノの処分・住まいの整理整頓に取り組み、「今日はあそこをキレイにした」と子に伝えました。
それが自身の期待していた場所ではない、期待していた結果ではないとき、「どうしてそんなところを掃除するの?」「もっと先に掃除する場所があるでしょう」と子が非難してしまうことが非常に多いです。
たとえ今回の取り組み・成果があなたの期待していなかったものだとしても、「褒める」ことで次の取り組みへつなげることが出来ます。
掃除に取り組んだ本人は、心・頭で色々なことを考えたうえで身体を動かします。その取り組みを非難してしまうと、もうあなたの依頼に応えようとは思いません。
一時的な成果ではなく、継続的な努力を促すようにしましょう。
以上、エンハンシング効果とその検証実験、実家の片付けに応用するコツを解説しました。実家の整理整頓をめぐって家族関係がごちゃごちゃしがちな方は、ぜひ本記事で紹介したヒトの心理を応用してみてください。