家を片付けたい人必見、ヒトが持つ「損失回避」の傾向。だからモノを捨てられない?

ヒトは、同じ価値だけ得するよりも、その価値だけ損することを避けることを重視するとされています。モノを手放せない、捨てられない人が持つ心理も、これに似ているのかもしれません。

本記事の要約

ヒトは100円拾ったときの嬉しい気持ちよりも、100円失くしてしまい落ち込む気持ちにより意識が向き、「嬉しい気持ち」を得るよりも「落ち込む気持ち」を避けることを重視することが知られています。

これを損失回避と呼びます。パッと見たところ、モノを捨てられない人にも同じことが当てはまりそうですよね。


本記事では、この損失回避について分かりやすく解説したうえで、モノを処分できない人の思考について、考察していきます。

ぜひ最後までお読みください。

本記事で解説する内容

・損失回避とは

・損失回避の選択肢の例

・モノを手放せない人にとっての「損失」とは

損失回避とは

得よりも損の回避を重視する心理

損失回避とは、ある価値の分だけ得をすることよりも、その価値の分だけ損してしまうことを避けることを重視する、というヒトの行動の傾向を指します。

すごく単純に言い換えると、ヒトは「1万円拾った、嬉しい!」という気持ちよりも「1万円失くした、最悪...」という気持ちを強く感じてしまうということです。

損失回避の語源

損失回避は、もともと認知心理学や意思決定理論という学問分の研究者であるダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)とアモス・ウヴェルスキー(Amos Tversky)により発展・研究されていました。英語圏では loss aversion と呼ばれています。

これを日本語へ直訳すると「損失回避」となります。

本当に「損失回避」の傾向は存在する?

損失回避の傾向は実在するのか?という批判も実は存在しています。そのため、この傾向が全てではないということは認識しておいた方がいいかもしれません


現在、損失回避に向けられているギモンとして、以下の3つなどがあります。

・必ずしも損失回避傾向があるわけではなく、決定による影響の規模によるのではないか(例:100円なら失ってもいいけど、1万円はきつい)

・損失回避の傾向は、思っていたほど多くないのではないか(例:そこまで多くの人がこの傾向を見せるわけではない)

・損失は獲得よりも気を引くことは確かだが、それが最終的な決定において獲得よりも損失の回避を重視する傾向となるとは限らない(例:損を気にしつつもそれを回避することよりも得を選ぶ人もいる)

損失回避の選択肢の例

1つめの質問

以下の2つの選択肢のうち、あなたならどちらをとりますか?


・100万円を確実に受け取ることが出来る

・クジを引き、当たりを引くと(50%の確率)200万円を受け取ることが出来る

2つめの質問

以下の2つの選択肢のうち、あなたならどちらをとりますか?


・抱えている200万円の借金が、減額されて100万円となる

・クジを引き、当たりを引くと(50%の確率)抱えている200万円の借金が帳消しとなる

それぞれの質問の一般的な回答

一般的に、1つめの質問に関しては「100万円を確実に受け取ることが出来る」を選ぶ人が多いといわれています。あなたはどちらを選びましたか?

数学的な考え方である「期待値」という視点で質問1のふたつの選択肢を見てみると、どちらの価値も100万円で等しいにも関わらず、ヒトはひとつめの選択肢を取りがちだということです。



2つ目の質問に関しては、「クジを引き、当たりを引くと(50%の確率)抱えている200万円の借金が帳消しとなる」が人気の選択肢となります。

期待値でいうとどちらも100万円です。ただし、質問1に関しては堅実に100万円を取る人が多いのにも関わらず、借金の軽減に関してはギャンブル性が高くても200万円を帳消しにしてもらいたい傾向があるのです。



このことから人は損失(質問1に関しては50%の確立で何ももらえない、質問2に関してはとにかく抱えている損失=借金をどうにかしたい)を常に避けるような選択をとりがちだとされているのです。

モノを手放せない人にとっての損失

「モノを捨てる」「捨てない」の選択肢

モノを捨てられない人の目の前に提示される選択肢は、例えば以下のようなかんじでしょうか。


1.これまで通り、ずっと不要なモノを所有し続ける

2.モノを捨てた方がいいという声に従って、処分してみる



ひとつめの選択肢に関しては、これまで通り変化せず、失うものは何もありません。リスク0%です。


ふたつめの選択肢に関しては、これまでの生活に変化を与えるため、以下の2通りの結果が見込まれます。確実に良い結果となるわけではありません。

・捨てるようアドバイスをくれる人の言う通り、良いことが起きる(部屋がきれいになったり空間に余裕が出来たりすることを、嬉しいと感じるなど)

・捨てたことで悪いことが起きる(捨てたことを後悔したり、今後それを使う場面になったときに手元にないため再度購入する必要があるなど)


モノを手放せない人は、「捨てたことで悪いことが起きる」リスクに気をとられてしまっていると考えられます。

手放せない理由を理解する

不要なモノでもどうしても処分することが出来ない人は、もしかすると損失を回避するというヒトの傾向に逆らうことが出来ていないのかもしれません。

この記事を読んでいるあなた本人、もしくはその家族が「モノを捨てるよう説得されても聞く耳を持たない人」の場合、まずはそのことを理解するようにしましょう。

【総括】損失回避の傾向が、モノの処分を阻む

以上、ヒトの持つ損失回避の心理と、その考え方を基にモノを捨てられない人の考え方を考察してみました。

当サイトでは、モノを捨てられない人を説得する際に知っておきたいヒトの心理や交渉術を他にも多数紹介しています。ぜひチェックしてみてください。

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