心理的リアクタンスとは、ある個人が、誰かもしくは何かによって自由が脅かされるかもしれない、と察知した時に感じる反感のことです。
他人から見て不要なモノ・邪魔なモノを手放すよう説得すると、「いつか使うかもしれないから」「もったいないから」「なんでそんなことを言われないといけないんだ」と反発されがちですよね。これは心理的リアクタンスによるものだと考えられます。
相手の反発を引き起こさずに説得することを意識してみましょう。
・心理的リアクタンスについて
・誰でも知っている身近な心理的リアクタンス
・モノを捨てるよう説得すると反発する理由
心理的リアクタンスとは、自由に向けられた脅威に対して抱く不快な感情の喚起のことです。分かりやすく言うと、「やりたいようにやってるのに、どうして指図されないといけないんだ」、これが心理的リアクタンスです。
一般的に、ある個人に心理的リアクタンスが発生した場合、心理的リアクタンスはその個人へ脅威に抵抗するよう動機付けを行います。
例えば、人を説得しようとした際、相手が猛反発してこちらが意図したこととは全く逆のことをしてしまう、という経験は誰にでもあると思います。
具体的には、モノ(周りから見ても明らかに不要なモノ)を手放せない人へ捨てるよう説得しても、絶対に捨てようとしない、というパターンです。
反発してしまう理由は、心の底からそのモノを大事にしているなど様々な要素があると考えられますが、心理的リアクタンスはその中でも主要なひとつと言えるでしょう。
心理的リアクタンスを構成する主な要素は以下の4つです。言い換えると、誰かがあなたの説得に反発した際、以下の4つが確認出来たら(当てはまったら)それは心理的リアクタンスが発生しているといえます。
【4つの要素】
・自由を認知していること
・自由への脅威
・反発
・自由の保護
なおここでいう自由とは、権利や発言、行動、思想、態度などを含んでいます。
以下のような慣用句や心理学におけるヒトの心の働きは、心理的リアクタンスの例としてよく挙げられます。いずれの場合も、「心理的リアクタンスが発生すると、人はその脅威に対抗するよう動機付けられる」ことに当てはまっています。
・隣の芝生は青い:自分のものより、他人のものの方が良く見えるという意味の慣用句。手に入らないからこそ、よけいに追いたくなるという心理的リアクタンスの例です。
・ロミオとジュリエット効果:主に恋愛において、簡単にはうまくいかない恋の方が感情が高ぶるという心理のことです。
・ブーメラン効果:被説得者(説得される側)が、説得者(説得する側)とは全く反対の方向へ動いてしまう現象。
・鶴の恩返し:「絶対に開けてはいけませんよ」と人に化けた鶴に言われたおじいさんは、ガマンできずにふすまを開けてしまう。
・浦島太郎:「この玉手箱を絶対に開かないでください」と言われた浦島は、ガマンできずに箱を開けてしまう。
・カリギュラ効果:「カリギュラ」という映画が暴力的な表現を含むことから、アメリカの一部地域において上映禁止になったところ、逆にそのことが話題となりニュースに取り上げられ、上映禁止地域の人々がわざわざ上映している地域まで足を運んだ、という実際の出来事があった。この事件を例にあげて、日本では「禁止されるとやりたくなる」という心理をカリギュラ効果と呼ぶことがある。
ここまで読んでもらうともうお分かりかもしれませんが、不要なモノを手放すよう論理的に説得しても納得してもらえない理由のひとつは心理的リアクタンスです。
上で解説した「心理的リアクタンスが起きる理由」に当てはめると、以下のような心理になっていると考えられます。
・自由を認知していること:これまでもずっとそのモノを持ち続けてきたし、捨てないという判断は自分で選択した。
・自由への脅威:「捨てない」自由を、「捨てろ」という説得により脅かされる。
・反発:「捨てない」自由が脅かされていると気付き、「捨てろ」という説得に反発。
・自由の保護:説得に従わないことで、自身の「捨てない」自由を守る。
心理的リアクタンスを引き起こして、一度「自由を侵害する者」という認識をされてしまうと、被説得者は説得者にたいしてネガティブな感情を抱くことがあると知られています。
このネガティブな感情は、今後の説得・交渉にも影響を与えかねません。
そこで、いかにして心理的リアクタンスを引き起こさずに相手を促すかが大切となります。
頭ごなしの説得はやめましょう。そうすると相手はあなたを敵とみなしてしまいます。
逆に、「相手の自由を脅かすつもりはない」ということをアピールすることで、反感を抑えることが出来るかもしれません。以下のような質問をして、まずは相手の考えを受け止めることから始めてみましょう。
例「捨てろとは言わないけど、どうしてそれをずっと置いたままにしているの?」
まずは相手を肯定すること、共感することを心がけてみると、相手はこちらを信用できると踏んで、ひとまずこちらの話を聞いてくれる姿勢を見せ始めるはずです。
モノを手放せない人を、こちらが考える「明らかに捨てるべき理由」を基に説得しても決して応じてもらえません。それは心理的リアクタンスが働くから。
まずは、心理的リアクタンスを引き起こさないことを意識してみましょう。
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